六月、この棚の作りかたがひとつ増えた。

いくつかの言葉を持ち寄って、そこから一篇を立ち上げる。落語でいう三題噺の流儀である。「売れない・古物商・嘆き・切り替え」の四つから『売れない蓄音機』が生まれ、「歌・響く声・変わらない・言語」の四つからは『変わらない歌』と『子守唄の国』が、双子のように生まれた。お題が同じでも、入る扉が違えば、別の家に着く。

不思議なのは、お題はばらばらなのに、どの篇も「人より長く残るもの」の話になったことだ。売れない蓄音機、変わらない歌、消えた言語の最後の器、誰のものでもない星の数、再生する機械のなくなった八センチの盤。井戸は、どうやら同じところにあったらしい。

毎日決まった時間に積み上げていた時期が終わって、棚の呼吸は変わった。言葉が持ち寄られたら書く。それだけの、不定期で、手わたしの作りかたである。