五月は、この棚にとって出入りの多い月だった。

毎日一本、動画の要約をもとにしたエッセイを積み上げていた時期で、その群れはいま書庫に移してある。棚に残ったのは、短い物語が三つ。怒りに点数をつけてみた帳簿、連休のあいだ観光客に借りられていた通り、駅のホームで肩を押された夕方。どれも、いつもなら通り過ぎていた小さなずれを、いったん立ち止まって見ようとした文章である。

並べて見ることは、答えを出すことではない。並べると、それまで気づかなかった輪郭が、ほんの少しだけ濃くなる。この月に学んだその手つきは、棚の作りかたが変わったいまも、どこかで続いている。