洗濯機がこわれた。
はじめは、脱水の音が少し鈍いと思っただけである。屋外に置いてあるので、雨の日のあとはいつも何かしら機嫌が悪い。沖縄の雨は横から吹きつけることがあるから、蓋の合わせ目にも細かい水が入りこんでいるのかもしれなかった。それでも、しばらく置いておけばまた何事もなかったように回り出すので、私はそのたびに、まだ大丈夫だろうと思っていた。
けれど今度は、ほんとうに動かなかった。
蓋を開けても、閉めても、電源を入れ直しても、洗濯槽の底はただ暗いままである。雨のあとに残る生ぬるい湿気だけが中にとどまっていて、何かがすでに使われない器になってしまったことを、洗濯機のほうが先に知っているように見えた。
それを買ってくれたのは祖母だった。
ひとりで暮らすなら、まずこういうものが要るのだといって、店でいちばん大きくも新しくもない、白い洗濯機を選んでくれた。あのとき祖母は、雨のかからない場所に置きなさいよ、とたしかに言ったのである。私はうまく返事をしたはずなのだが、結局は外に置き、台風のたびに濡らし、晴れた日には乾くだろうと都合よく考えてきた。
だから、こわれた理由はたぶんはっきりしている。
それでも、すぐに粗大ごみのことを考える気にはなれなかった。夕方になると雨がまた少し降り、蓋の上に細かい水滴がならぶ。暗くなってから外を見ると、その白い蓋だけが妙にきれいで、まるでまだ中で何かひとつだけ仕事を続けているように見える。
昨夜も、雨の音が強くなったころ、外で一度だけ短い駆動音がした。
私は窓を開けてたしかめたが、洗濯機は暗いまま、じっとそこに置かれていた。もちろん電源など入れていない。それでも、祖母が買ってくれたときと同じ白さが、濡れた蓋のところにだけ残っていて、どうも明日の朝すぐには片づけられそうにないのである。